国内のボクシングの試合で最も盛り上がったとされるのは、
1994年12月4日 WBC世界バンタム級タイトル統一戦
辰吉丈一郎 X 薬師寺保栄 戦である

この試合が今でも人々の記憶に残っている要因をマジメに考えてみます。
日本人ボクサー同士初の世界タイトル戦、そして壮絶な打ち合いとなった試合内容も当然あるのだが、
その壮絶だった接戦以上に
試合前の壮絶な舌戦が大きかったと思う。
ボクシングに限らず格闘技全般において舌戦はショーパフォーマンスとも言われ、興行を成功させるためには欠かせないものである。
しかしこの試合の舌戦は辰吉のショーパフォーマンスから始まったものの、それが徐々に周りに引火していき、パフォーマンスではなくなっていった経緯がある。
舌戦になったまでの経緯を簡単に書くと、元々は王者だった辰吉が怪我で防衛戦が出来ないときに、韓国の辺丁一選手が暫定王者になり、それに挑戦した薬師寺が僅差で判定勝ちし暫定王者となった。薬師寺が負けていてもおかしくない判定内容に、当然おもしろくない辰吉は、マスコミを通じてこの試合を散々こき下ろした。そしてお互いの試合が決まるとその舌戦はエスカレートしていく。
辰吉は薬師寺の事を「
勘違い君」
薬師寺は辰吉の事を「
思い上がり君」
辰吉 「
薬師寺ごときジャブなしで勝てる」
薬師寺 「
辰吉って一発で相手倒したこと ないでしょ?」
辰吉 「
ラメ入りメッシュが目に入るのでやめろ」
予備検診で顔を合わせた時、辰吉は
「ほな帰るわ。バイバイ」言うたら(薬師寺が)『うん』て、うなずいてたわ。
なんかええ子やん。ちゃんと返事しよるもん。
けど、殺すことに変わりはないよ。悪いけど」
高橋ヒロシのマンガに出てきそうな振り返り時のセリフである(笑)
この辺まではまだ挑発(パフォーマンス)の域だったと思われるたが、
この2人の舌戦は徐々に周りも巻き込んでいき、その発言内容も挑発の域を超えていく。
マック・クリハラ(薬師寺 セコンド)
「
辰吉? バカ。ヒーイズバカ。当日は奴の両目を潰してやる!」
「
辰吉は薬物使用の疑いがある」(試合前日発言)
薬師寺と親友である井岡は、勝敗予想を聞かれ
「
嫁さんの綺麗さでは薬師寺君の圧勝です」
山田隆裕(当時Jリーガー)
「今の日本ボクシング界で「天才」と呼べるのは辰吉丈一郎だけ。
その彼と試合が 出来ることを薬師寺は感謝しなきゃいけないのに、怒らせて本気にさせてしまった。
バカですよ。殺されて当然」
マスコミの煽りもあって通常のパフォーマンスの域を超え、プロレスで行われるパフォーマンスの域に到達していた。
また辰吉が薬師寺の家族までを中傷の対象とし、辰吉一辺倒だった世間の風向きも徐々に変化していった。
2人は全く対照的なボクサー人生を歩んでいた。
デビュー当時から天才と呼ばれていた辰吉は、人気・実力共にナンバーワンで、史上最短のデビュー8戦目での世界タイトル獲得は当時の快挙であった。一方、薬師寺はその実績と裏腹に観客を集めるような人気はなかった。
(1994年 対決当時の戦歴)
薬師寺 25戦 22勝(16KO) 2敗1分
辰吉 12戦 10勝(8KO) 1敗1分
この戦いは薬師寺が正規の王者で実績も上にも関わらず、辰吉の人気によってその構図は逆となり、薬師寺が挑戦者と扱われた。実績でいえば薬師寺の方が勝つ確率が高いと予想されていてもおかしくないが、「辰吉は別格」という根拠のない空気が当時世間にはあったと思う。
辰吉人気に興行権の入札もTBSと日テレが奪い合い空前の金額(3億円超)が記録された。辰吉のファイト・マネーは、1億7千万円とも言われている。
このような筋書きがあって試合当日をむかえる。
(試合内容については素人なもので省かせてもらいます。)
試合終了のゴングが鳴り、解説の具志堅用高が
「闘い終わったら、二人は友達なんですよね」の言葉通り2人はリング上で抱き合っていた。
試合直後に辰吉は「薬師寺は強かったよ。試合前に言ったことを謝りたい。」と語り、薬師寺も「辰吉は自分がこれまで戦った相手の中で最も強い選手だった」と敗者を賞賛した。
あの辰吉が負けて、あの辰吉が謝ったというのが、舌戦から激闘へと続いた後の清涼剤となったのだ
ロッキー1を思い出して欲しい。
アポロは最初ロッキーを口汚く罵るが、もしアポロが純粋無垢な男だったら、あれほどの大ヒット映画となっただろうか?ロッキー4であそこまで盛り上がったのは、あの口汚いけど実力はあったアポロとの関係が大事だった事は間違いない。
不良ものマンガによくある王道パターンの「最初は悪役だが、戦いを通じて仲間になる」はいつの時代も人々を惹きつける魅惑のストーリーなのだ。
謙虚が美徳とされる日本において相手を罵るというのはそうあることではない。亀田のように一方的に罵ったり、度が過ぎると大衆の心は掴めない。群集はベタであってもいつの時代もストーリーを求める。そういった意味でもこの辰吉 X 薬師寺戦は普遍のストーリーが散りばめられていたからこそ、ボクシングに興味のない人々もこの試合に釘付けとなったのです。
それにしても辰吉という男は、勝つ時は本当に天才な勝ち方をして、
負ける時は相手の力を最大限に発揮させてから負けるというカリン様の様な選手です。
- 2007/05/23(水) 22:01:07|
- 懐かし検証
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ただ ただ ファイティングに泣けた この一言に尽きる。
- 2009/05/29(金) 21:56:19 |
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- Yako #-
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はじめまして
色々と読ませていただいてますが、まさに同年代!!
読んでるだけで当時の気持ちを思い出してしまいます★特に今回のボクシングに関しても、ウンウンって感じです。
まだまだ読みきれていないので、これからまた読ませていただきますね♪
- 2007/05/24(木) 06:24:51 |
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- took #-
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あの頃のボクシングはホントおもしろかったです。
鬼塚の疑惑の判定とかユーリ海老原の名前騒動とか。
そいえば井岡の世界戦観に行ったことあります。
興毅は辰吉と比べられることが多いけど、やっぱ辰吉の魅力にはかなわんわー。
個人的には今後の寿希也くんに期待してます。
- 2007/05/24(木) 00:22:34 |
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- ユズ #-
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